「レッドインボイスは必要でしょうか?」
ベトナムに初めて来た方にとって、馴染みのない「レッドインボイス」という領収書の意味を理解されない方が多いですね。
無理もありません、日本には無いものだからです。
ベトナムに赴任された方は、先ずこのレッドインボイスの意味を理解するところからはじめるケースが多いかと思います。
私もベトナムに来た当初、意味がわかりませんでした。
ただこの「レッドインボイス」は、ここベトナムでサービスを提供する立場の経営者にとって日本の消費税処理同様、とても大切なことなんです。
日本であれば、経費を証明する「領収書」の形は基本何でも使えます。
喫茶店でもらう手書きの領収書でも、会社の経理に提出すれば、経費処理をしてもらえます。
しかし、ここベトナムでは会社で経費計上することのできる領収書は、
- 「レッドインボイス」という会社設立時に配布される公的領収書
- 会社を持たない個人オーナーであれば、税務署にVAT10%を納税した際に受け取る「納税証明書」
この2種類のみとなります。
お店でお客様を接待し、そのお食事代を経費計上したいと思えば、お店に「レッドインボイスをください」とお願いしなければなりません。
お店からもらえるレッドインボイス以外の領収書を、ベトナムの所属する会社経理に提出しても、突き返されるだけです。
同じようにアパート(オフィス)を契約した場合、その貸主であるアパート(オフィス)オーナーが会社経営をしている場合は、レッドインボイスを要求すればもらえますし、
アパート(オフィス)オーナーが個人の場合は、家賃収入に伴うVAT税の納税をした際、税務署から受け取る「納税証明書」がレッドインボイスの代わりになります。
先ず、アパート(オフィス)家賃支払に対する領収書(レッドインボイス・納税証明書)は、ベトナムでは決められた公的領収書以外に認められていないということをご理解してください。
今日はこのベトナム国内の不動産取引における「レッドインボイス・納税証明書」の取扱について、簡単にご説明いたします。
なお、使う写真は最近撮った中で、輝いているものを使っています。
あまり、内容に関係はありませんので悪しからず。
よく賃貸の不動産業者のホームページや物件情報雑誌に、賃料の横に、
「VAT(税金)、管理費込み」
と書かれているのを見かける機会が多いかと思います。
この「VAT」というのは、 付加価値税 (Value Added Tax: VAT)のことで、一言でいうと「ベトナム国内における物の販売やサービスの提供並びに外国貨物の輸入に対して課される税金」です。
日本の消費税に近い税金ですね。
この付加価値税の基本税率は10%です。つまり簡単に日本流に言えば、
「消費税、管理費込み」
の賃料表示なんですよ・・・という意味です。
ベトナムに来られて賃貸住宅を契約し、生活がスタートします。
そして契約で決められた賃料支払いが始まります。
日本流で考えると、「アパート側からの提示家賃に税金10%と施設利用に伴う管理費がONされた金額を払っていく」ということになります。
ただ、ここで大切な確認をしていただかないといけません。
それは、
「お客様のアパート家賃は誰が払いますか?」
ここです。
今までご説明してきた「レッドインボイス(個人オーナーなら納税証明書)」という公的領収書が必要になってくるのは、「ベトナムの会社がお客様の家賃を支払う場合だけ」だということです。
当たり前のことかと思います。
「レッドインボイス(個人オーナーなら納税証明書)」は、ベトナム国内の会社の確定申告時にのみ必要なもので、家賃支払がお客様が所属する日本本社であったり、お客様個人名義でのお支払の場合は必要ないんです。
先ずはここをしっかりと抑えてください。
私達がお客様に、
「レッドインボイス(納税証明書)は必要ですか?」
とお伺いしている意味は、
「あなたがお住まいになるアパートの家賃はどなたがお支払されるのですか?」
ということなんです。
つまり、「レッドインボイス(納税証明書)が必要になるケースは、お客様の家賃をお客様が所属されるベトナム企業がお支払する場合に限る」ということです。
ちょっと思いきった言い方をしています。
この文章をベトナムの税務署員が読むと、
「おい、何を馬鹿なことを言っている。家賃の支払主が誰であれ、家賃を受け取った家主(オーナー)は、必ずVAT税を納税し、レッドインボイス(納税証明書)を提示する事になっているんだよ」
怒られるかもしれません。
しかし、現実はそうではありません。
上記の税務署員が言うとおり、完璧に100%納税しレッドインボイスをお客様に提出しているのは、外資系の大手サービスアパート、例えばFraser SuitesやSomerset West Point Hanoi、Hyatt Regency West Hanoiなどです。
しかし、それ以外の一般的にベトナム人ローカル企業が運営しているサービスアパートや、コンドミニアムの個人オーナーなどは、
できることなら納税はしたくない
と考えます。
これは世界共通の本音ですね。
ですので、お客様がお住まいになるアパート家賃をお支払していただく先が、日本本社かお客様ご本人(つまり賃貸契約は個人名義)となる場合は、「レッドインボイス(納税証明書)は不要です」と伝えていただければ、アパート側は納税しなくてもよくなるのです。
そして、納税しなくても良いと言うことは、アパート側は家賃にVAT税(10%)を乗せる必要がなくなるので、結果家賃は税抜家賃額となり、10%安い金額で契約できることになります。
「しかし、家賃は普通1,000$を超える場合、銀行振込で支払わないといけないと聞くぞ。銀行を通せば当局を誤魔化すなどできないでしょうが」
その通りです。
しかし、貸主側も馬鹿ではありません。
レッドインボイス(納税証明書)は必要ないと言われるお客様には、家賃の振り込み先銀行口座を指定してきます。
つまり、その場合会社の銀行口座を使わず、個人名義の口座を請求書に載せています。
あくまでも、税金は払いたくないの一心なんです。
あと、税込みか税抜かを知らせる不動産仲介会社ですが、以下のようなことが日常茶飯事に起きていますので、ご注意ください。
不動産仲介会社のホームページ上で、お客様に提示する家賃額を「税抜額」にし、レッドインボイス(納税証明書)が必要であることが判明した段階で、口頭で10%を上乗せするやり方をよく聞きます。
これは少しでも家賃を安く表示し、他社と差別化をするためですが、当社は最初から税込家賃額を提示しています。
その理由は、ベトナムに来られるお客様の大半は、ベトナム現地法人が家賃負担をしているからです。
「レッドインボイス(納税証明書)は要らない」と言われるケースの方がレアなんです。
であれば、最初から「税込み家賃」で表記をしている方が良心的だと思うのですが、いかがでしょうか?
他社の不動産業者のホームページを見ると、税抜家賃にした上に、家賃に含まれるインクルードサービスも一切記述せず、得たいの知れない低家賃表示を平気で出しているサイトをよく見かけます。
当社は、いかなる場合でも「税込・フルサービス込み」、しかもその項目表示を細かく記載しています。
家賃の安さで問合せを取ろうとする「釣りサイト」には、くれぐれもご注意ください。
注意すべきはお客様がベトナムに来られ、アパート契約をされる際、アパート側からレッドインボイス(納税証明書)を要求するべきかどうかを、必ず現地の総務(経理)担当者様に確認をしてください。
それで当社はアパート側交渉を致します。
最後に、これからベトナムに会社を設立する、その準備にために日本本社から来られる場合のアパート契約の注意点をご説明しておきます。
まだベトナムに会社はありませんが、設立の手続きやスタッフ募集、また関連企業様へのサポートなど、まさしく立ち上げ準備と平行して既存顧客対応のために来られる多忙なお客様をよくお見かけします。
この場合、アパート契約はどうすれば良いかです。
よく言われるのは、
会社設立には数ヶ月かかります。
それまでにかかる経費は、できることなら新会社の経費として組み入れたいんです。
アパート契約をして支払う家賃に対するレッドインボイス(納税証明書)を、設立後の日付でもらえないでしょうか?
これは残念ながらできません。
その理由は、貸主が法人(レッドインボイス)であれ、個人(納税証明書)であれ、家賃を受け取ってから納税までの時間が決められているからです。
契約書には契約期間が書かれています。
そして、その支払スパンも明らかになっています。
つまり、契約書を取り交わした段階で貸主は家賃に対する納税時期が明確になっているので、誤魔化せません。
納税義務を怠ると追徴課税となりますので、必ず貸主は納税をします。
レッドインボイス(納税証明書)は納税後速やかに発行されなければなりませんので、お客様の会社設立後の日付で後ほど提出することはできないんです。
ベトナムでの会社設立後から遡り、過去に払った家賃の経費計上はできません。
ここはご理解いただくしかありません。
以上、ご注意ください。