ハノイリビングの田口です。
昨年の9月の稿「今、ベトナムの不動産は「買い」なのか?」で、ベトナム不動産への投資の注意点について簡単にまとめてみました。
今日はその続編です。
簡単に前回書かせていただいた投稿をまとめて一言で申し上げると、
「少し様子を見ていただく方が良い、買い急がないでください」
でした。
その理由は2つあり、
- 購入後の登記(レッドノート)に不安がある
- 購入不動産の売却資金を国外に自由に出せない事情がある
でした。
ここまでお話ししましたね。
もう少し根が深い問題があります。
自分の力ではどうにもできないこと。
どうあがいても避けられないリスクが厳然としてあるということを今日はお知らせ致します。
購入後、自分の所有(長期使用)権を第三者に対抗できる為に、日本では投資主が購入者名義に所有権の移転登記を行い引き渡します。
登記簿に名前が付され、晴れて自分の名義であることを証明できるようになるのですが、それに相当するものがベトナムの場合「レッドノート(赤本)」です。
ハノイでは個人名義で購入した日本人が、このレッドノートを受け取った事例を耳にしたことはまだありません。
しかし、ホーチミンでは不動産売買がハノイより先走っていたことから、最近ちらほらとレッドノートを発給してもらった人が出て来ているようです。
「外国人でも不動産は購入できる」
どうやら少しずつ末端の役所の窓口にも、この制度が定着してきている感じがします。
また「購入不動産の売却資金を国外に自由に出せない事情がある」件も、例えば個人ではなく法人名義で購入したことにし、売却後しっかりと納税をすれば残金は本社へ送金可能です。
ただ、いくら税金を払わないといけないかは・・・やってみないと今のところわかりかねます。
さて、先ほどもっと根が深い問題があると申し上げた件です。
それは、
完全に建築申請通りの建物が建つこと、また申請時の内容通り、寸分違わない開発物件ができて初めてレッドノートが発給される
ということです。
日本では至極当たり前のことなのですが、しかしベトナムでは得てして「申請通りにならない」ことがよく起きます。
それが怖いんです。
ベトナムの新築分譲物件も日本同様「青田売り」です。
つまりまだ更地の状態のまま分譲受付を始めます。
日本は分譲開始の時の分譲価格と完成間近の時の価格が変わることなど絶対ありません。
しかし、ベトナムの場合は初期投資時の価格は完成間近の価格に比べて安く設定されます。
その理由は、
「分譲開始当時の売却資金をある程度建築費やそれ以外の運営費に充当する予定をしているから」
なんです。
詰まり、分譲のスタート時に出来るだけたくさんの資金を集めたいので安くして集うんです。
なんだか更地の状態でまだ形のない時期の投資はリスクを伴う為、その分安くしているように思えてならないのですが。
もし、思うように出資者(購入者)が集まらなかった場合どうなるか。
予定が狂うことになりますね。
当初計画していた通りの建物が建てられなくなる可能性が出てくる。
コストを下げる為に室内面積を調整したり、部屋の間取りを変更したり・・・
一度走り始めた事業を止める恐ろしさを味わうくらいなら、止めずに建築を進める方が対外的にも良いに決まっています。
しかし、建築確認申請通りの建物では無くなる確率が上がる。
竣工前の消防検査などで引っかかる・・・
許認可が降りないと、そのコンドミニアムを購入した人達は全員、レッドノートを受け取ることはできません。
もっと怖いお話しをします。
私共のお客様で、ハノイ西部にあるコンドミニアム「INDOCHINA PLAZA」を日系100%の会社名義で購入された方がいます。
分譲価格を全額支払い、全ての手続きを終えた後、コンドミニアムの管理事務所に「レッドノート」の申請に行かれました。
しかし待てど暮らせど連絡がない。
おかしいと思ったそのお客様が管理事務所の窓口に問いただしたところ、言われたことは、
「住所がまだ変更になっていないからレッドノートは出せません」
…意味が分かりません。
住所が変わらない・・・どういうことか??
そのお客様は理由の本質を知った時、愕然としたそうです。
詰まりこういうことなんです。
そのINDOCHINA PLAZAというコンドミニアムの土地は、1枚の大きな一人地主の土地ではなく、複数の地主の土地を合わせて一つに「合筆」した土地なんです。
つまり、複数の地主がいた時は、その土地の数だけ住所があったのですが、INDOCHINA PLAZAの開発を進める前に、
「合筆して一つの土地にし、一つの住所にする」
という政府との取り決めをしていたんです。
我々日本人からすれば、建物を建てる前に下物(土地)の権利関係を綺麗にする(地上げする)ことなど当たり前の事で、それを終わらせずに上物(建物)を建てるなどあり得ないことです。
そのお客様が管理事務所の窓口から聞いた「住所が一つになっていないから」という説明に、
「今更何を言ってるんだ!」
噛みついたのは言うまでもありません。
しかし相手の管理会社の担当は、ひたすら「ちょっと待ってください」。
結果約半年待ってレッドノートが発給されたそうです。
運良く地主達の合意が成って、無事に一筆の土地となり、一つの新住所が確定したとのこと。
しかし・・・
もし運悪く地主同士が同意せず、こじれにこじれた場合、どうなっていたのか。
当然その企業さんはレッドノートは受け取ることができないですね。
レッドノートが無い不動産はある不動産に比べ、当然高値で売却し辛くなります。
青田の状態で、果たして建物の建築申請通りに建つのか、また建物以外にも土地の権利関係が綺麗にクリアするのか、いずれもはっきりするのは投資をした後です。
手付金なり中間金なりまとまったお金は既に支払っていますね。
こういうリスクを回避する手立ては、
- 購入者の投資金を守る為に投資会社(分譲側)が保証制度に登録をする
- 不動産売買契約書に、ある一定の条件を満たさない場合は白紙解約可能な「停止条件」を付ける
ことです。
しかし、2の「停止条件付き契約」はどうでしょうか。
停止条件を付けることで、余計リスクを強調することになり、開発主とすればできれば避けたいと考えるでしょう。
残るは1の保証制度を充実させることです。
購入に先立って、外国人向けの分譲業者に対し、
「何度かに分けて支払った売買代金の保証制度が有るのか」
確認することです。
確かに今回の改正住宅法を受けて、安心して外国人にベトナム不動産を購入してもらう為に、各大手デベロッパーは差別化の為にいろんな優遇措置を検討してくることが考えられます。
冒頭でご紹介したように、
違法建築が理由で、また土地の境界や権利関係でトラブルが発生した為に竣工(消防)検査がパスしなかった場合
支払額を保証してもらう制度は特に外国人にとって必須であるはずです。
必ず確認してください。
最後に、ドルと円の為替のリスクのお話しです。
ベトナムの不動産に投資をする際、売買契約書にはベトナムドン表記で売買代金が書かれています。
詰まりベトナム国内の不動産ですから、ベトナムドンで支払わないといけません。
しかし、日本からベトナムのデベロッパー指定の銀行口座へ振込支払する際、ドル口座への支払になるかと思います。
いずれにせよ、円とベトナムドンとの間にドルが介在することになります。
ドルとベトナムドンのレートについては、ベトナム政府がある程度為替の動きを調整しているので、激烈な乱高下はありません。
しかし、ドルと円の間はそのまま市場に晒されているため、短期間に大きく値が動きますね。
1ドルは70円近くまで上がった後、120円まで戻し、また今100円に近づいています。
この為替リスクを意外と考えていない方が結構います。
ドルを挟んで日本円で約2,000万円から3,000万円近い投資をする訳です。
為替変動はかなりのリスクだと思いますが、いかがでしょうか。
リスクの無い投資はもちろんありません。
しかし、ベトナムの不動産投資は、世間一般で喧伝されているほど安心な投資でも無いことを肝に銘じてご検討ください。
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