ベトナムの若者達の将来について

文廟にある大樹

今、日本からアジア地域への企業進出を促進する狙いで、たくさんのセミナーやベトナム現地企業を見学する研修会など、日本で開催されています。
現状打破の為、活路をアジアに求める企業が後を絶たないからですね。

中国を始め、インド、カンボジア、ミャンマー、タイ、そしてインドネシアと選択枝はたくさんあるかと思いますが、私は会社の業務の関係上、今は偶然にも「チャイナ・プラスワン」で注目を集めるベトナム・ハノイで仕事をさせていただいております。
従って東南アジアと言っても、ベトナムのハノイ事情しか実感として皆さんにお伝えすることができません。

  • ベトナムは今後どうなっていくのか
  • ベトナムの若い労働力の可能性は
  • ベトナムに対する投資対効果は今後どうなっていくのか

日頃からいろんな方々とお話をさせていただく機会があり、大体お会いするとこんな内容についての話になります。
「ベトナムびいき」を意識しているわけではありませんが、やはり「頑張って欲しいな」と応援したくなるんですね。

先日、ベトナム企業の社長さん達が集まる経営フォーラムがあり、若いベトナムの人材についての意見が、ある雑誌の記事に載っていました。
その中に「PHO24」というベトナム料理のチェーン店網の組織化を推し進めている社長さんの意見として、

「店を任せて売り上げをキープできる人材が・・・非常に少ない」

という記事を見つけました。
ここの社長さんは不足労働力をベトナム以外の国のスタッフで補っているとのこと。
20代がベトナム人口のほぼ半分を占める「若者大国ベトナム」で若者の人材不足という記事に、思わず目がとまってしまいました。

経済成長著しいベトナム。
その中で若い経営者もどんどん起業して財を築く人もいれば、一日中靴磨きをしてなんとか生計を立てている若者もいます。
貧富の差を日々の暮らしのなかで、普通に目にすることの多いベトナムなのですが、先日若くして起業したベトナム人の社長様と食事をともにさせていただく機会がありました。

今日は、その時にお伺いしたベトナム事情をご紹介したいと思います。

ハイバーチュン通りを写真撮影で歩く新婚さんカップル私がお会いしたベトナム人の会社経営者さんは、日本の大学を卒業され、日本の企業に勤めていた期間が通算で約8年ほど。
当然日本語はぺらぺらです。

日本の優れたサービスと、日本企業で努めた経験を持ってベトナムに戻り、そして今では約250名ほどの社員を抱える会社を経営されている方です。
ベトナム人としての視点、そして日本の立場からの視点を両方併せ持った実力者です。

私は「PHO24」の社長さんの記事について触れ、

「なぜ,ベトナムであなたのような優秀な人材が育ってこないのか」

聞いてみました。
その社長さんは、「PHO24」の社長さんの意見に同意した上で、こう言いました。

「田口さん、まずベトナムは100%自給自足できる農業国だということを忘れてはいけませんね」

ハノイに生活していると、ベトナムが農業国という実感はなかなか湧きませんが、少し郊外に出ると、果てしなく広がる畑、田んぼ・・・確かにそうですね。
まだまだ開墾されていないエリアがたくさん目に付きます。

「あとね、ベトナムのすぐ隣には大国中国があるということ、これも忘れてはいけません」

まず、ベトナムが100%自給自足のできる農業国であることが「若者労働力の質」にどういう関係があるのか、ピンと来なかったので聞いてみますと、

「私の会社での経験ですが、ベトナムの若者を雇いますね。地方の農家から出てきた人は安く採用できますが・・・すぐ辞めてしまう傾向が強いです。
逆に高くてもハノイ出身者を雇った方が仕事を続けてくれるんですよね」

生粋のハノイ出身者より圧倒的に地方の農業地域から出てきた若者の方が人口は多いんです。
新年のテト休み、がらがらになったハノイを見て、これは実感させられました。
その若き社長さんが何を言いたかったのかと言うと・・・

もし仕事がイヤになっても、地方出身者には帰る地元がある・・・農業をしている実家が多いので食べるものには困らない。
ところがハノイで生活している人たちは、日本と同じく・・・
昔から自分の技術で仕事をしてサラリーを取ってきた父親母親を持つ方々なんです。
帰るところは・・・競争激しいハノイ市内です。
都会で生活する私達日本人と余り変わらない・・・やるしか無い・・・だから頑張る、というんです。

地方出身の若者全員が「堪え性が無い」とは思いません。
しかし、統計的にみると圧倒的にこの傾向が強いそうです。

あと、隣が中国であることがどう若者の労働意識に影響するのかという点については、こうおっしゃってました。

「食べ物から着る物、あらゆる工業製品が隣の中国に既にある・・・
ということはわざわざ一から作らなくても中国のルートを作り、安く仕入れてくれば仕事になるという「変な安心感」があるんです。
ベトナムでメーカーが育たない原因の一つはここなんですね・・・」

昔日本も資源の無い中で、加工貿易から高い品質の商品を輸出することで、礎を築いた経緯がありますね。
資源が豊富で足りないのは技術力くらい・・・という中国は今海外からの企業誘致を通して技術力を上げる努力をしています。
ベトナムにとって、全てにおいて先を行く中国が隣国というこの地理的な要因は、私達が考えている以上にベトナムの若い労働力に深く影響しているんだなと感じました。

お目にかかった社長さんは、まず前提としてこの2つの要素、

  1. 最悪、地元農業に従事すれば食べてはいけるという自給率100%の農業国であるということ
  2. 隣国中国の巨大な経済力と価格競争力のある商品の流入が、ベトナムでのメーカーを生むきっかけに水をかけている

この動かすことのできない「背景」を無視して物を考えてはダメですと説明してくれました。
その上で、その社長さんが言われる、「若い労働力の質が上がらない要因」を語ってくれました。

文廟の塀沿いで健筆を振るう書道家さん達3つあるというんです。

まず1つ目、企業側が若い人材の育成に時間とお金をかけたがらないということ。

じっくり腕組みをして、下を向いて考えていたその社長さんが開口一番に言われたのがこれでした。

「これは、私達経営者側にも問題があるんだと思います。
しかし、ベトナムの若い人たちはノウハウを身につければ、更に上の収入目指して会社を辞めていく人がほとんどなんですね。
時間とお金をかけて社員教育をしても、そのノウハウを他社で使われるくらいなら、ほどほどにして必要以上に経費をかけない方が良いと判断するんですね・・」

日本ではジョブローテーションで、いろんな仕事を経験してもらい、最終的には幹部として会社を支えてもらう、その為の社員教育プログラムは大企業であればあるほど充実しています。
当たり前のことだと思うのですが・・・ベトナムではちょっと違うんですね。

「そんな疲れることはやらない」

というのが基本スタンスのようです。
サービスを理解しないスタッフが多かったり、レストランで若いスタッフが必要以上の人数で待ち構えている現状は、一人の優秀なベトナム人スタッフを育ててマネジメントしてもらうことで解消できるかと思うんですね。
しかし、「マンパワーが低い分、人数でカバーする」という考え方は、若者達にとって、また経営側にとってどうなのでしょうか・・・

日本流の人材育成のやり方が、どこまでベトナムで通用するか、ベトナムに進出してきた日本企業様の共通の課題だと思います。

ハノイ市のシンボルの元となった文廟のモニュメント次に2つ目、ベトナムには人材教育機関が・・・少ない。

これは昨年末にベトナムでNPO法人として活躍されている日本人スタッフの方からもお聞きしたことです。

その方は、美容師資格の教育機関と自動車整備士の資格教育機関をベトナムで立ち上げるべく、かけずり回っておられる方ですが、ある日一緒に食事をさせていただく機会がありました。
その帰り、タクシーの中でつぶやかれた言葉を今でもはっきりと覚えています。

「若い人たちは必死で頑張っているんです。しかし技術を高める教育機関が少なすぎる・・・」

教育に携わる先生方のお給料は、とても安いのだそうです。
それではベトナムの教育に従事する公務員の先生が育たない・・・
国として、大学の教育カリキュラムを見直したり監視を強化したりと、手を打とうとしているみたいですが、やはりここは民間の活力を利用したいところです。
ただ、共産主義の国で教育機関を民間が行うのは・・・とても難しく、「目に見えない壁」もまた大きいようです。

文廟にて合格祈願
最後の3つ目は、必要以上に領収書の出ない経費がかかりすぎるということ。
ただこれに関しては・・・あまりここで詳しく言及しないでおきます。

日本の高度成長を支えたのは、他ならぬ「人の力」です。
会社から時間と費用をかけてもらった能力を使って、会社に「利益」をお返しをしないといけない・・・
「義理を果たす」という感覚でもって、脇目もふらず仕事に没頭した結果の今の日本だと思うんです。

どんな優れた教育機関よりも、一番身につく教育というのは・・・
自分が選んだ会社でサラリーをもらいながら、そのお金で大切な人を守り働く中で得られる現場での経験、これに勝るものは無いはずです。

日本が優秀なのは、加工技術だけでは無いと思います。
「同じ釜の飯を食う仲間」として社員を扱うやり方、これは今の日本の会社経営者に脈々と流れる気質だと感じます。

そんな暖かい家族のような扱いを受けたことが無いベトナムの若者労働者達・・・なのかもしれません。
サービスというものの考え方を、じっくりと教わったことが無いから・・・サービスに無頓着なだけだと思います。

ベトナム現地の人材の教育方法と、
その人材にかける資金と、
そしてベトナム人の若年労働者に真剣に向き合う情熱と、

神経に新聞を読むお姉さん

どれが欠けてもうまくいかない。
このバランスがとても大事だと思います。

これからベトナムに進出される担当者の皆様、
今こちらの若者達はアゲインストの風に耐えながら、必死で自分の進む道を模索しています。
たくさんの優秀な学卒者が、自分の将来を託す会社を探しています。

どうか、チャンスを与えてあげてください。
彼らを生かすも殺すも・・・使う側の「気持ち」次第だと思います。

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田口 庸生

田口 庸生 の紹介

初めまして、「ハノイリビング」営業担当の田口(たぐち)です。 日本より初めてベトナムのハノイに着任された日本の皆様、 愛するご家族を日本に残し、初めての「海外単身赴任」をこれから経験される皆様、 快適なハノイでの生活を満喫していただくために、皆様の「お住まい探し」から「入居後のサポート」まで一貫した「窓口対応」を請け負います。 「ベストマッチ」を合い言葉に・・・ どうぞお気軽にお問い合わせください。 お待ちしております。
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