ハノイリビングの田口です。
タイトルと冒頭の写真が、全く合っていないように思います。
今回のお話は、少々ギスギスする内容ですので、せめて写真くらいほっこりできる絵を持ってきたかったんです。
最近私が癒やされたものを、今回繋ぎ写真として利用させていただきます。
日頃よりハノイリビングの社長をやらせていただき、スタッフ達と接していて、「裏切られる」というようなきな臭い気分になったことなどありません。
それは、何の邪心もなく、与えられた持ち場を彼らなりにこなそうと頑張っているのが肌で感じられるからです。
数年前には、全く仕事をせず高い給料を受け取るだけの年寄り社長、コンニャクのような役に立たない男性日本人社員、それに鼻が伸びすぎた勘違いベテランローカル社員等がいましたが、幸いなことに皆辞めてくれましたので、今はノンストレスで快調に仕事ができています。
10人にも満たない小さなサービス会社で、いくら説明してもこちらの考えを理解しない社員がいると、やりにくくて仕方がないものですが、今はお陰様でやりたいことをやれている状態です。
先日、私と同じ不動産仲介業を営む日本人社長さんと久しぶりに再会し、酒を酌み交わしながらいろんな話をさせていただきました。
その時にお聞きした悩みを、今回皆様にも共有できればと思い、筆を取ることにしました。
冒頭のタイトルのままです。
彼曰く、約5年間、会社設立の時からずっと支えてくれていた、経験豊富で日本語がペラペラなベトナム人女性スタッフに裏切られたというんです。
その女性スタッフには、彼とすれば、今までの功績を考慮に入れ、営業事務という役職ですが、基本給1,100$にプラス歩合という好条件で厚遇しているつもりでいたと言います。
彼自らの資金で立ち上げた小さな不動産仲介業です。
にもかかわらず、基本給1,100$というのは、相当期待している社員でないと出せない額だと思います。
ところが・・・
彼からこの度の問題を耳にした時、思わず腕組みをして考え込んでしまいました。
同業である以上、いつ何時同じようなことが自分にも降りかかってくるかわからない・・・そしてそれをされてしまうと防ぎようがない、と感じたからです。
事の顛末はこうです。
彼が営む不動産仲介業は賃貸物件を日本のお客様にご紹介するのが主な仕事で、我々と同じ形態です。
もし日本人から、
「1,500$まででアパートを探してください」
という問合せを受けると、部下のベトナム人スタッフにその日本人の情報(連絡先や会社名など)を渡し、ベトナム人オーナーやアパート担当へ連絡を取り、空き情報を調べさせます。
そして、数件ピックアップした後、問合せをいただいたお客様へ連絡をし、物件を見てもらう約束を取り交わします。
案内をし、部屋を決めていただき、契約に移行する。
こういう流れです。
1回で決まれば良いのですが、こだわるお客様の場合、もう一度他の気になる物件を見たいと言われることもあります。
いずれにせよ、お客様には必ず「決め物」をぶつけること。
そうでないと決まりません。
「決め物」とは、悩むお客様の目を釘付けにし、観念していただき、契約に踏み切ってもらえるような「パンチ力」のある物件のことです。
新しくて、間取りが良く、家賃も抑えられたような物件。
各エリアで「決め物」はあります。
ただ、決め物は誰が見ても良いと思える物件ですから、なかなか空いていないんですね。
ですので、決め物の近日中に出るチェックアウト住戸を先ず抑える、こういう地道な営業努力が必要になってきます。
こういう仕事は、アパートオーナーと直結しますので、会社のエース級の仕事になります。
彼が「おかしい」と思ったのは、その決め物を彼の「エーススタッフ」が抑えられなくなってきたからです。
いつも「空いていません」という回答ばかりになってきたと言います。
チェックアウト予定住戸の情報は、オーナーから定期的にメールで送られてきます。
その情報を受け取るのは、通常は店のエース級スタッフです。
ハノイリビングでは、「チビエースTinhちゃん」です。
体が小さいので、私が勝手に「チビエース」と命名していますが、彼女の交渉スタイルは馬力があり骨太です。
事前にオーナーから送られてくるメール情報から、初動さえ間違わなければ、今までの付き合いもありますので優先的に回して貰ったりできるんです。
いつも「無い」というのは、やはりおかしい。
当社のチビエースTinhは、通常よりも安い金額で「決め物の空き住戸」を抑えてくれます。
更にもう一声家賃交渉をしたい時は、御大「マダムHuyenさん」が後から被せて説得すると、下がる時も多々あります。
しかし彼が言うには「そういう抑え方が出来なくなってきた」、というんです。
そして、最近会社を辞めていった社員から信じられない事実を耳にします。
「あの子、他の不動産仲介業者のエース級のスタッフと結託して、自分たちで別に不動産仲介会社を作り、お客様を横取りしているんですよ」
すみません、余りに辛い話に思わず甘いマンゴー写真をもってこさせていただきました。
その辞めた社員さんも、エース級スタッフがやっているやり方に納得が行かず、会社を去る決意をしたと。
要は、「決め物」を抑える事ができなかったのではなく、今まで通りきっちりと抑え、上司の日本人には、
「他社で決められたみたいです」
などとウソをつき、自分たちでこっそり作った不動産会社の別のスタッフから、その日本のお客様へ直接連絡をし、予め確保しておいた「決め物」を案内し契約を取る。
そして、アパートオーナーから仲介手数料をせしめる。
上司の日本人が近況を確認する為に、再度お客様へ連絡すると、
「ああ、他社さんから紹介してもらったアパートに決めました、すみません」
これで終わりです。
仕方がない、次頑張ろう・・・そうなります。
彼が営業して持ってきた日本のお客様を、アパートオーナーをよく知るベテランローカルスタッフの匙加減で、自分たちのローカル会社の契約になるように操作し、売上にしてしまう。
アパートオーナーにしてみれば、長年日本人のテナントを紹介してきてくれた、「有り難い日系業者のスタッフさん」ですから、少々おかしいなと思ったとしても、何でも言うことを聞くわけです。
クセが悪いのは、同業他社のエース級のベテランスタッフ数人と不動産仲介会社を作っているということです。
それぞれの会社で捕まえてきた日本のお客様を、それぞれの会社が持つ「決め物」をうまく操作し合い、自分たちの会社の売上に持ってくるやり方を、しらーっとやっていること。
「こいつら自分たちで作った新しい会社のホームページも作っているんですよ、これも辞めた社員から教えて貰いました。
ここまでくると、もう確信犯ですね・・」
この話を聞いて、腹が立つことは勿論ですが、
「どうすれば防げるんだろう」
ここに考えが集中してしまいます。
万が一、仮にチビエースTinhちゃんがこういう操作をやったとしたら・・・
いろんな角度で考えてみても、絶対に気が付きません。
当たり前です、私は彼女を信頼しているからです。
恐らくじわーっと分かってくるのは、そういう操作をしているローカルスタッフの元で働く部下の子達なのでしょう。
しかし、長く不動産仲介業を続けてきたスタッフには、たくさんのアパートオーナーと繋がりを持っているものです。
他のスタッフがオーナーに家賃を聞くと、「1,500$だ」と言われたとしても、そのベテランスタッフの口から聞くと、
「わかったよ、あんたには世話になってるからね、1,400$で決めてくれなよ」
こうなります。
オーナーのネットワークは、会社ではなく個人に紐付くことになります。
少なくともアパートオーナーから見た「不動産仲介会社」は、社長ではなく、そこで働く付き合いの長いベトナム人ローカルスタッフとイコールになります。
そして、このベテランスタッフの太い繋がりには、どうあがいても対抗できないので、ついて行けない下のスタッフ達は文句も言えず辞めていくことになります。
ここは、改良の余地がある部分だと思っています。
同業の彼は、私がハノイに来た時と同じくして自分の会社を設立しました。
それだけに私も頑張る彼から刺激を受け、共に励まし合いながら今までやってきました。
今彼は、そのスタッフをどうやって辞めさせるか、考えています。
ベトナムの労働法では、余り無下な解雇通告はできません。
と同時に今後どうすれば、こういう問題を防げるか。
酒を飲みながら話合いました。
これは私の結論です。
先にも申し上げましたが「防げない」、と思うんです。
信頼している部下を、頭のどこかで「人間だから出来心はあるもの」と割り切って考えておくことは大切なのかもしれません。
しかし、気持ちよく働いて貰う為には、「任せて」、そして「成果に対して正しく報酬を払う」、これは当たり前です。
ですが、悪意で分からないようにやられると、どんなに注意をしても、未然に防ぐことなどできません。
もし足元をすくわれた時、どう考えるのが正解か。
それは、
「スタッフとのやりとりに、自分の落ち度がどこかにあった。だから心が自分から離れてしまった」
こう考えるしかない・・・と言いますか、こう考えないと強くなれないのではないでしょうか。
「性悪説」でベトナムのスタッフを一括りに結論付けてしまうと、何度も同じ結果を繰り返すだけです。
ベトナム人も日本人も関係なく、スタッフはやはり上司の一挙手一投足を注意深く観察しています。
「隙は見せない」
そう意識して仕事をしていたとしても・・・
そもそも私もその友人も、ベトナム語は話せません。
話せないので、ベトナム人オーナーとの交渉をスタッフに任せないといけなくなります。
もし、私達日本人社長が流暢にベトナム語を駆使できれば、オーナーと直接話ができますので、妙なスタッフの動きなど簡単に看破できるんです。
「ベトナム語が話せない社長」であることですら、優秀なスタッフからすれば「隙だらけな会社」に見えてくるのでしょう。
また、最初は勤勉でも長年任せっきりで働かせていると、やはり慢心が生まれます。
長いベテランスタッフであればあるほど、その接し方は「以心伝心」などという意味の分からない日本流は取らず、ほんの数分でも良いので会議室に入り、2人で営業の進め方を確認をし合う。
スタッフの意見を直接聞く、こういうコミニュケーションは絶対必要だと思います。
しかし、そこまでやってもやられてしまったなら・・・
自分の非力と先ずは受け止め、そして粛々と退職させる手続きに入る。
ベトナムの労働法に則って。
これしかありません。
サービス業であれば、人数の如何に関わらず、どこでも出てくる問題かと思います。
しかし、しっかりと後処理をし「膿」を出した後の組織は、確実に強くなるはずです。
他のベトナム人スタッフも目の当たりにする訳ですから。
「これはやっちゃいけない」
社長の毅然として処理をする姿を見せなければなりません。
良い結束力が生まれる。
そして、これを踏まえて後任のスタッフを入れる。
新しい後任に対する接し方も、自ずから変わるはずです。
彼は今その真っ最中の処理をしています。
彼にはこの逆境を早く乗り切ってもらい、バージョンアップしてもらいたい。
切にそう願います。
そして自戒したいと思います。
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