ハノイリビングの田口です。
「安南パーラー」
昔懐かしいパーラーという名称がお尻にくっつく。
「蜜豆(みつまめ)」「レスカ、オスカ」と注文したら出てくるような、レトロ感溢れる名称なのですが、頭に「安南(あんなん)」というベトナムの古称がひっつくと、ベトナムの古き良きモノがハイカラな匂いを伴って鼻を突いてくる感じがします。
ベトナムを限りなく愛する日本人達が「安南パーラー」と名付けたこのお店。
「ベトナムでいっちょうやったるか」
長年暖めてきたベトナムに対する想い。
やりたいことは、既に熟慮済の熟成済。
弾けることのできる場を持つことのできたスタッフの皆さん。
一体どこに向かって駆け出そうとされているのでしょう。
皆さん、この「安南パーラー」を普通の喫茶店だと思ってはいけません。
主催人に「ハノイの手練れ」MORE Production Vietnam(モア・プロダクション・ベトナム)の勝(かつ)代表がひかえています。
普通の喫茶店など彼女のコンセプトにある訳がありません。
じゃあどんな喫茶店なのでしょうか?
ある日、ハノイリビングに安南パーラーの「メガネ店長」こと永沼さんが訪問されました。
「カフェをOpenさせたいんです。そんなに広さを求めません。でもいろんなモノを陳列させたいので、通り沿いで店内をスカッと見越せるような、そんな立地がいいんです。
面積は50㎡以上、間口は5メートルは欲しいんです」
静かな佇まいの永沼さん。
日頃おそらく温和しい感じの彼女が、真剣に訴えかけてきます。
聞けばもう相当数の物件を見てきた様子で、全てが帯に短しで彼女の納得が行く物件では無かったと。
「どんなカフェをされるんですか?」
店舗物件というのは、その店のコンセプトに寄って街の中での「収まり方」を考えないといけません。
「何屋さん」をするのか、詳しく聞かせていただかないと、私自身がピンとこないので最適なご提案ができません。
「ベトナムの伝統的な工芸品を店の中でご紹介したり、日本の良いモノを逆にベトナム人の方々に触れて頂いたり」
少し首を傾げながら、一言一言慎重に言葉を選んで話をする永沼さん。
私の頭で、カフェとベトナムの伝統工芸、日本の文化がどうも混ざり合ってごちゃごちゃになり、イメージが湧いてきませんでした。
その後、運営組織母体が勝さんのMORE Productionだとお聞きした時、
「ああ、何かを仕掛けるんだな」
今までの長いハノイでの生活を通じて、彼女や彼女の周りの人達が「したい」と思うことを一つずつ実現していくお店を手懸けるということなのかな。
何となくですが、そう受け止めたんです。
で、思いつく物件をご案内させていただきました。
そしてその日は終わったんです。
後日、永沼さんからまた連絡をいただきました。
「先日見たサービスアパートの1階の物件をもう一度見たいんです」
どうも永沼さんの琴線に触れた物件があったようです。
そのサービスアパートの1階が、今営業されている旧市街地「Hang Vai通り」にある「安南パーラー」に大変身することになります。
このサービスアパートを持つオーナーは、大の日本贔屓です。
日本人向けのサービスアパートを既に4件経営しており、全てほぼ100%の日本人入居率をキープする達者なオーナーです。
私共とも付き合いが長く、たくさんの日本のお客様をご紹介させていただきました。
「カフェなら私も楽しみです。是非流行るカフェをお願いします」
自分のサービスアパートの1階に店舗を入れるという判断を許してくれたオーナーさん。
「日本人が運営するカフェ兼ショップ」だからOKを出してくれたんです。
永沼さん達の想いが壁を突き破った形になりました。
そして私は赴任以来、要所要所でベトナムハノイの生きた知恵をいただくばかりで、何のお返しも出来ていなかった勝さんに対し、ほんの少し面目が保ててホッとした次第です。
2015年4月24日にGrand Openした「An nam palour(安南パーラー)」。
ドタバタしてOpen以来一度も足を運べず不義理をしていた私ですが、先日の日曜日、休みを利用して遅ればせながら行かせていただきました。
サービスアパートの看板「Tran Suites」の文字が右側に小さくなって、その分「安南パーラー」の文字がドカっと左側に君臨しています。
「凄い交渉力・・・」
思わず吹き出しそうになりました。
そして店内に。
ツアーでハノイに来ている方々でしょうか、若い男性3名。
そして日本人男性とベトナム人女性のカップルさんに年配のご夫婦連れ。
私が入った後、すぐに追いかけるように入って来たお客様はご年配の男性お一人。
いろんなジャンルの方々が、それぞれ冷房の効いた店内でくつろがれていました。
一人席に着くとすぐにお水とメニューを持ってきてくれました。
「何とかわいいメニューだな」
楽しい絵本に出てくるような水彩画の挿絵が目に飛び込んで来ます。
思わずペラペラと最後までめくって眺めていると、永沼さんがオーダーを取りに笑顔で近づいて来てくれました。
美味しいと評判の「安南ラスク」はもちろん、それ以外にどうしても食べてみたいメニューがありました。
マンゴープリンです。
この写真をみて、何となく味を想像されるかと思います。
しかし、そのお考えの味ではおそらくありません。
もっとあっさりして、ほんわかと甘い、ベトナム人の味つけではないと思います。
これはスイーツに熟練したシェフの味です。
「甘いのでは」と思い、ブラックのアイスコーヒーを注文したのですが、その必要はなかったです。
生クリームがドバッと掛かっている高級ホテルのマンゴープリンより、こちらの方が余程健康的で美味しいと思います。
日曜日だったからか・・・
綺麗なすっぴん姿で元気にお店に入ってきた林さんにもいろいろお話しをお伺いさせていただきました。
林さんは最近ハワイからハノイに移ってこられた異彩の新人さんで、勝さんの「懐刀」です。
「勝さんは芸術系担当ですけど、私は外回り担当の体育会系です」
力強く、切れ味抜群な林さんです。
その林さんに、ベトナム人の子供たち対象に絵本の読み聞かせ会を安南パーラーでやっていることを教えていただきました。
「ベトナム人の子供さんに日本の絵本を読んであげるの?」
連れて行かれたのは、安南パーラーの奥の部屋にある本棚でした。
結構昔懐かしい絵本が並んでいます。
私が昔子供たちに読み聞かせた「ぐりとぐら」なんかもあります。
「隔週で木曜日、ベトナム語サロンということで、ここで皆でベトナム人の子供たちに日本の絵本を読んであげるんです」
なんと優しい企画なんだろう。
勝さんを始めMORE Productionの社員さん達は、皆ベトナム語がペラペラです。
日本語ぺらぺらなベトナム人スタッフもおられます。
だからこの企画が成り立つんですね。
よく見ると、1ページごとにベトナム語の翻訳文が切り貼りされています。
安南パーラーのスタッフさんは、どう言う思いでこの作業をしていたんだろう。
多感な幼少時代に、好きなだけ楽しい絵本に触れられるベトナム人の子供たちって、一体何人いるんだろう。
前から不思議に思っていましたが、貪るように本を読みふけるベトナム人の若者に出会ったことがありません。
電車移動など無く、専らバイク移動の彼らです。
見かけないだけかもしれません。
じゃあ、街中でプラスチック椅子に座りながら、本を読んでいる若者を見たことがありますか?
見かけた事などありません。
彼らは本をどこで読んでいるんだろう。
スマホにダウンロードして書籍を読んでいる?
そんな気配すら感じません。
子供の頃から物語に触れる環境って、本当に貴重だと思います。
読書が楽しくて仕方が無い、そう思うベトナム人が増えないと、子供に降りていかないですね。
その場を安南パーラーさんは提供しているんです。
コマを見つけました。
林さんに聞くと、
「絵本の読み聞かせ会の時は、ベトナム人のちびっ子が集まりますので、日本の伝統芸のこま回しを教えてあげるんです」
なんと、こま回しまで。
日本の子供ですら、その存在価値が薄らいで来ている「こま回し」です。
この写真の方の名前を私は存じ上げていないのですが、こま回し保存の為に動かれている方だとか。
純粋な子供のために、一肌脱いでくれる大人が子供の周りにどれだけいるのか・・・
日本の昔から受け継がれてきている子供の遊びを、ベトナム人の子供のために、日本の大人が一肌脱ぐ場を創り出してくれている安南パーラーさん。
彼女達の「安南パーラー」を立ち上げたコンセプト、じわりと伝わってきましたか。
私達は今技術が発達して、豊かな日本からここベトナムに赴任してきています。
自分が所属する組織の利益に自分がどう貢献するのか、それを考えておけば、それ以外は何をしても良いと考える方々は多いと思います。
私共は、昨年の8月に面倒な合弁先と関係解消を致しました。
その後、一番最初にしたことは「日本商工会」への参加です。
日本商工会の運営目的は、いろいろありますが最終的に、
「日本人として少しでもベトナムの為に貢献すること」
どの部会の目的でも、私達が商売をやらせていただいているここベトナムハノイの為に、「何ができるのか」、この考え方から絶対ブレることはありません。
しかし、それを地でやっている草の根組織があります。
それが「An nam palour(安南パーラー)」です。
もちろん、本業から逸脱することはありません。
この安南パーラーの経営母体は在住日本人向けフリーペーパー「Vietnam Sketch(ベトナムスケッチ)」やVietnam Airlineの機内誌「HERITAGE JAPAN(ヘリテイジジャパン)」、ベトナム人向けフリーペーパー「Kirara(きらら)」などを企画制作されているMORE Production Vietnam Co., Ltd.(モア・プロダクション・ベトナム)ですが、旅行代理店の「スケッチトラベル」さんも関連会社になります。
お店の奥まで行くと、ツアーデスクがあり、いつでも旅行手続きに対応することができます。
この安南パーラーの場所が、また海外からの旅行者がうようよしているところ。
私がいたときも、飛び込みで西洋人カップルが来られ、店の説明を聞かれるシーンを見かけました。
「ハノイの旧市街地」は正に観光地のメッカです。
その中に位置する安南パーラー。
では、お店の位置図と概要をお知らせします。
- 【お店の名前】「An nam palour(安南パーラー)」
- 【エリア】 Hoan Kiem(ホアンキエム)
- 【住所】1F Transuites,,24 Hang Vai St., Hoan Kiem Dist., Hanoi
- 【営業時間】9:00am〜21:00pm(everyday)
- 【連絡先】04 3266 8096
- 【e-mail】annam.parlour@gmail.com
- 【ホームページ】http://annam-palour.jimdo.com
- 【facebook】https://www.facebook.com/annam.parlour.more
母体のMORE Production Vietnam Co., Ltd.(モア・プロダクション・ベトナム)さんが既に「Social Activities」の一環としてベトナムの子供たち向けに「絵本を読み聞かせるボランティア活動」をかねてから取り組まれています。
ハノイに長く住まれている勝さん達にとって、ここベトナムハノイは「第二の故郷」のようなものでしょうか。
その故郷に一緒に住むベトナム人に向ける眼差しが、暖かくなるのは自然の流れなのかも知れません。
最後に永沼さんに取りだして貰ったものが、この写真の工芸品です。
Dinh Cong(ディンコン)という街の職人さんの作品で、全て手作りだそうです。
さりげなくこういうモノも店内に陳列されています。
「嫁さんにプレゼントを」
と一瞬考えましたが、装飾品を買ってもあまり身につけないのと、サイズが分からないので今回は見送りました。
しかし手作りにしてこの値段??と思うほどリーズナブルな価格でした。
皆さんも実際店に行き、手にとってじっくり眺めてみてください。
マンゴープリンのおかわりを真剣に考えていたとき、ふと後ろに座る年輩男性の仕草が目に入ってきました。
スマホのカメラで、注文されたスイーツを撮影されています。
おそらく日本人でしょう。
かなりのご年配なんです。
「facebookにアップするのかな」
なんとも微笑ましい光景です。
お客様が入れ替わり立ち替わり、今は日曜日の昼下がりなのでひょっとして混み合う時間帯なのかもしれません。
「メガネ店長」の永沼さんが、ベトナム人スタッフに細かく指示を出して、接客を教えている様子が印象的でした。
次に行くと、子供さん連れのベトナム人のお客様がちらほら増えているかもしれませんね。
室内の壁面を利用して絵画の個展を開くことも視野にいれているとのこと。
ベトナムの器用な文化に気軽に分かり易く触れられるスペース「「An nam palour(安南パーラー)」。
次はどんな企画を繰り出してくるのか、楽しみです。
以上、日本人にもベトナム人にも優しい文化の交差点、「An nam palour(安南パーラー)」のご紹介でした。
◆少しでも皆様のお役に立てれば嬉しいです。
↓ 1クリックよろしくです!
にほんブログ村
11月25日~29日まで ハノイに行きます。
エバグリ-ンホテルに泊まるので 近いと思います。
スイ-ツを食べに行きますよ。
Tanaka様
コメント有り難うございます。
残念ながら、この「An Nam Palour」は閉店しております。
少し古い記事にお返事をいただきました。
とても人気があり、絵本の展示などもされていました。
再開を望む声もあり、またどこか別の場所でOpenされるかもしれません。