今日は韓国企業と日本企業の海外進出の進め方について、その違いを簡単にお話します。
使用する写真は、韓国企業がここベトナムハノイに威信をかけて建てたCALIDAS LANDMARK72(カリダスランドマーク72)です。
今Kim MaのDAEWOO HOTEL前に建築中のLOTTEビルと並んで韓国の象徴のような複合施設です。
日本は国が支払うODAに紐付いて、企業が船団を組み、投資対象国へ進出します。
全ての投資がそうではありませんが、特に発展途上国に対する大口投資はODA絡みになるケースが多いと思います。
国が後ろ盾の「安全な取引」になるからですね。
どれくらいのODA額かというと、以前詳しく書かせていただきました。
ちょっと古い記事で恐縮ですが、対ベトナムODA支援額と日本人赴任者数の関係についてを参照してください。
では韓国の場合はどうなのでしょう。
韓国企業の海外進出の話をする前に、その韓国企業の力強さについてちょっと触れてみます。
以前日本に比べて韓国の建物がやたらと目に付くハノイの事情について、まとめさせていただいた稿があります。
この稿で、韓国よりはるかに厳しい日本の「コンプライアンス(社会規範に基づく法令遵守)」に対する姿勢が、投資件数で韓国に水をあけられている原因の一つとなっていることを指摘させていただきました。
これから先の話はある韓国企業の社長さんから聞いた話です。
日本語の達者なその韓国人社長は、長年日本で仕事をされていたからか、とても親日です。
おまけに親分肌でお酒の大好きな方ですから、いつも豪快な酒盛りになります。
「俺はサムスンが大嫌いだ、あの選良意識、グループ会社の血のにじむ努力の上に成り立っていることを当然のように思うエリート意識が我慢ならねえ」
スマホもLG製を使う徹底ぶり。
好き嫌いの激しい社長さんです。
それだけに話が面白いんです。
そんな社長さんに「どうして韓国企業は強いんですか」と聞くと、
「強いのかな・・・でも韓国人はほとんど片道切符で海外赴任になるからね。
50歳になって幹部クラスに昇格していなければ、韓国に戻っても席なんかないよ。」
「退路を断つ」心構えで、海外赴任先で余程の実績を上げないと・・・
雇用継続は覚束ないというんです。
「やっぱり雇用上、『辞めてくれ』とは言いにくいから、嫌でも『辞めます』と言わせるわけよ。
『戻ってくるか』という言葉を真に受けて韓国に帰ったら、椅子と机は屋上に放り上げてある・・・
これで大概のヤツは辞めるんだよ」
嘘のような、しかし本当の話だそうです。
だから、海外に出された韓国の赴任者は、一部を除いてその国で根を張って独立する人が多いそうです。
赴任先で必死になって人脈を作り、本社の冷徹な処置にも家族を守れるように、赴任先に活路を見いだそうとするんです。
規模は小さいですが、それぞれの分野のそこそこのレベルの韓国人が「一人親方」で踏ん張っている。
そんな会社が毎年着実に生み出されるんです。
日本企業では、海外赴任の経験は職務経歴上プラスに働くと思うんです。
求められる目標をこなせば、箔もついてきます。
その海外赴任経験を生かして、最後は日本本社でマネジメント業務に就く、そんな流れかと思いますが、韓国の場合は少し違うようです。
「海外に出ればそこで成果を上げ続けること」
を求められるんですね。
日本のように国を跨いであちこち転々とする人事など基本無いそうです。
そして50近くになって自分の社内での「立ち位置」を見て、独立するかどうかを決めるそうです。
10年以上韓国に家族を残してハノイで起業し、単身頑張っている韓国人も結構いるそうです。
「しかし金払い悪いよ、そんな小さな会社」
そんな同じ韓国の中小企業に対し、苦虫を噛みつぶしたような顔をして腐していました。
「取引先からまだ振り込んでもらえないから、払えるわけないだろうが!」
そんな言い訳をされ、ずるずる支払を伸ばされているその親日社長さん。
同じ韓国の企業同士の取引でも、一筋縄では行かないビジネスの難しさがあるようです。
前置きが長くなりました。
韓国企業の海外進出についてでしたね。
韓国は日本のようなODAを元手に進出するやり方ではなく、企業単独で進出をし、ベトナム企業と合弁会社を作ります。
お互い共同出資者として、事業成功に向けて動き出します。
しかし、日本は先にODAとして大金をベトナム政府に渡します。
そのODA資金がどういう経路でビジネスに生かされるのか、細かいところは分かりません。
さじ加減はベトナムの役所が握っていますから。
100%正しく意図した事業につぎ込まれているのか・・・不透明なところがあります。
しかし、韓国は違います。
ベトナム企業にも投資をさせます。責任を共に最後まで取らせる訳です。
合弁を組むわけですから、共に成功させないと利益を享受できません。
取りっぱぐれを出さない、韓国企業のしたたかなやり方です。
韓国企業にしてみれば、日本の至上空前とも言える莫大なODA投資が奇怪に映っているのかもしれません。
「お金に困っているベトナム政府に、先にお金渡してどうするんだよ」
そんな疑問を持っているようです。
やり方がどうのと言うつもりはありません。
確実に攻め方の違う両国ですが、ハノイ市内を見渡せば韓国の建物が嫌でも目につきます。
大規模開発案件と、それらを支える韓国人による独立中小企業群。
そういう構図が成り立っているのかと思うくらい、調子よくベトナムハノイで地盤を固める韓国勢です。
日本流のやり方が、ベトナム政府には一番有り難い方法であることには違いありません。
経済成長のまっただ中のベトナム。
お金だけではなく、長年企業の第一線で勤め上げた優秀な日本人を直接派遣し「ノウハウ」を人づてで伝授する草の根的な活動も行っています。
近い将来、ベトナムの工業力が隆盛し、東南アジアを支える大国に発展したとき、その影で支え続けた日本流の支援が評価される日が必ず来ると信じて止みません。
ベトナムは中国のように日本のノウハウを「廉価にむしり取る」思想の国ではないと、私は思います。
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