「机の引き出しに入れていた米ドルが・・・ありません」
中国とハノイを行ったり来たりされているお客様。
アパートの主寝室にある執務机の引き出しに、中国元札と米ドル札を並べて保管していたらしいのですが、
米ドル札だけがなくなっているというんです。
洗濯物で靴下やTシャツがなくなるケースはありますが、大体は他のお客様の洗濯物から出て来たり、整理している衣服ケースの中からひょっこり出て来たり・・・
と解決する場合が大半です。
が、現金となると・・・ちょっと話は変わってきます。
詳しく話を伺うと、日曜日の早朝ゴルフコンペに出かけられる際、コンペの参加費を支払う為にドル紙幣を持ち出されました。
抜いた紙幣以外の残りのドル紙幣は、10ドル紙幣が19枚、5ドル紙幣が19枚の計285ドル。
正確に数えた紙幣を机の引き出しに戻して、出かけたそうです。
戻ってきたのはその日の夕方4時ごろ。
机の引き出しを開けると、すぐ横にある中国元紙幣を残して、285米ドル紙幣だけが跡形もなくなくなっていたというんです。
「確かにここに置いたと思うんですけどね・・」
とこんな曖昧な記憶ではなく、その日のことですし、紙幣の数まで明確に数えて出かけた間に無くなっているので、「お客様の記憶違い」などという結論でかたづけることのできる問題ではありません。
事務所で腕組みしていても埒があきませんので、スタッフと2人でお客様のアパートに駆けつけました。
お客様のアパートはKim Ma通り近くの1フロア1部屋の小規模なサービスアパートです。
いつも受付ロビーにいる守衛のおじさんに、昨日日曜日の状況を詳しく聞きました。
- 日曜日なので、ハウスキーパーさんは来ていないこと
- お客様のお連れ様らしき人はいないこと
- エレベーターメンテナンスの業者は土曜日作業をしたが、当日日曜日は完全OFF状態だったこと
- 守衛自身が常にロビーにいたわけでもなく、近くの管理アパートに行ったり来たりしていたこと・・・
部屋の鍵を持っているのは、その守衛さんとハウスキーパーさんとお客様だけです。
年はもう60歳を超えたくらいの好好爺然とした、とても優しい目をした守衛さん。
とてもお客様の部屋に入って、迷惑をかけるような感じの方ではありません。
ハウスキーパーさんもその日は日曜日で、アパートには来ておりません。
人を疑いだしたらキリがありませんね。
非常に気を遣うクレーム対応となります。
結局アパートの社長と打ち合わせをし、アパート側が全て弁償することで話が収まりました。
しかし、ここに落ち着くまでには・・・いろいろと紆余曲折がありました。
最初、アパートの社長は「被害届を出して欲しい」と言ってきたんです。
「自分たちで先ずは調査をして」という考え方ではなく、いきなり司法の手に委ねるというのもどうかと思うのですが、その根底には
「お客様側の問題ではないのか・・・」
という意識があったんだと思うんですね。
その考えも一理あるんです。
というのも、こういうケースは年に何度か経験するのですが、そのほとんどの原因は・・・
- お客様が頻繁に連れ込んでいる女性
- お客様が個人的に契約しているハウスキーパーさん
アパート側の「伺い知れない人物」が絡むケースが非常に多いんです。
アパート側の社長からすれば、
「またそうなんじゃないの」
と思う気持ちも分からないではありません。
しかし、身に覚えの無い今回のようなお客様にとっては・・・たまったものではありません。
おまけに「被害届を出す」と一言でいいますが、はっきり言いましてお金がかかります。
もちろん、警察署に行っても公にそんな請求があることなど、どこにも明記されていません。
要するに、「領収書のもらえない支出」が、ここでもやっぱり発生します。
じゃあ、被害届けにかかる費用って、相場はいくらくらいなのか・・・
大体、「被害額の半分」・・・これが相場です。
見つかるか見つからないか分からないのに、半分のお金を先に払わないと警察は動かない・・・
「被害届けを処理する作業代」が被害額の半分だと言われて、被害届けを出すお客様は、おそらく一人もいないと思います。
ベトナム人の方々も同じです。
パソコンを盗られる、iPhoneをカバンごとひったくられる、スクーターを盗られる・・・
しかし被害届けなど、ばかばかしくて誰もやりません。
よほど新品のスクーターか車などが無くならない限りは。
こういうケース。
オーナーの意見とお客様の意見。どちらも主張すべき言い分があります。
しかし、放っておけばお互いの溝が深まり、「文化の違い」を痛感させられる結果となるだろうと思います。
私達のような仲介業者が間に入らないと、先ず解決はしない問題です。
アパートの社長との交渉で当社が主張したことは、
- 「被害届け」に掛かる費用の相場を分かっていながら、「先ずは被害届け」を要求し、自身のアパートの初動調査を怠った事実
- 「再発をさせない対策」をどう打つか、その手段
この2点です。
幸いなことに、このアパートの社長はハノイ市内にたくさんのサービスアパートを経営する実力者。
当然たくさんの日本人との契約実績があります。
日本人の考え方を熟知している社長だけに、軌道修正も早かったです。
無くなったお金を同じドル紙幣で支払うことはもちろんのこと、初動対応の非を認め、毎月4本のWater Bottle(飲み水ボトル)を無償で付けるサービスも付加してくれました。
また、再発防止策として、入り口エントランスとエレベーター内に監視カメラを設置することで合意。
最終的にお客様も納得をしていただけました。
お腹が硬くなった・・・数日間でした。
「日本人向けのサービスとは何たるか」を理解しているオーナーと、そうでないオーナーと・・・
1年以上の賃貸借契約をむずばれる方が大半です。
当初の部屋の見た目は変わらなくても、住んでいくうちに、そのオーナーの考え方の違いで居心地は全く正反対になる・・・
お客様にとって防ぎようの無いこんなリスクに対して、できる限りその可能性の少ないオーナーの部屋を紹介することと、そんなオーナーのグダグダをコントロールするのも、我々仲介業者の仕事の一つだと思っています。
「気配り」でお金をいただくサービス業の最たる仕事が、不動産の仲介業だとすれば、まだまだ至らないところが多いな・・・と感じる今日この頃です。
頑張ります。
また、お客様もアパート内での現金の扱いについては充分に注意してください。
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