ベトナム発ビジネス情報雑誌「Access」への投稿記事をアーカイブさせていただきます。
順にバックナンバーをこちらのサイトでアップしていきます。
何を考え、どんな内容で書かせていただいているかは、こちらの稿で説明させていただいております。
ご参考ください。
なお、他のバックナンバーをご覧になりたい場合は、次のリンク先をご確認ください。
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ハノイリビングの田口です。
ベトナムに赴任され、無事アパートを見つけ契約に至ります。
契約書の内容について打ち合わせをする際、
「契約期間をどれくらいにすれば良いですか」
とよく聞かれます。
普通大半のお客様は「1年契約」を選ばれます。
たまに半年とか3ヶ月という短期契約を指定される方もいますが、アパート側はあまりいい顔をしません。
その理由は当たり前ですが、半年よりも1年間の家賃収入を見込める方が嬉しいからですね。
同時に1年契約と短期契約のお客様が、同じアパートを見て被ってしまった場合、間違い無く1年契約を希望されるお客様が優先されます。
短期なら家賃が少し高くなることもありますね。
逆に1年以上の長い契約を希望されるお客様もいます。
その目的は、
「家賃の値上げを受けなくて済む」
「長い契約期間にすれば少し家賃を下げてもらいやすくなる」
からです。
しかしオーナーは嫌がるんです。
なぜか。
「家賃の値上げを要求できなくなる」
からです。
ああ、すみません。
内容が小学3年生の算数のようなレベルで恐縮です。
今ドルに対してベトナムドンは下げの傾向です。
毎年着実に下がっています。
家賃の支払いは、ベトナムではUSD(ドル)ではなくVND(ベトナムドン)です。
家賃交渉はUSD(ドル)建てで行うことが殆どですので、必ずUSD(ドル)からVND(ベトナムドン)へ変換する為の「レート」が登場してきます。
私がベトナムのハノイに赴任してきた2011年は、
1USD = 21,000VND
だったと記憶しています。
最近は、
1USD = 22,740VND
です。
5年前は、1USDのモノを買うのに21,000VND払えば買えていましたが、今は22,740VND出さないと買えなくなっている・・・
ということは、どんどんUSD(ドル)に対し目減りを続けているVND(ベトナムドン)ですので、オーナーは「このレートを毎年見直しをさせて欲しい」と言ってくるんです。
このオーナーの考え方は、至極普通で、極端で無謀な言いぐさではありません。
ドルベースでの家賃額は据え置きでも、レートの再設定をするとベトナムドンでの支払額は少し増えることはお分かりかと思います。
そこを2年、3年と固定レートにすることを、オーナーは嫌がると言ってるんです。
さすがにオーナーは認めてくれません。
さて、では1年契約をしたとして、契約半ばで急に引っ越さなければならなくなった場合どうなるかです。
もちろん皆様もご存知かと思いますが、賃貸契約書には「途中解約」についての記載があります。
一般的には、
「1ヶ月前に告知をすれば、家賃1ヶ月分のペナルティの支払で途中解約ができる」
と書かれています。
ちょうど預けている敷金(デポジット)も1ヶ月分ですので、「デポジットと相殺」されるケースが多いです。
「あなた1年契約にサインしているんだからね。私達も見込みが外れて困るんですよ。残りの期間分まとめて一括で支払ってください」
そうオーナーに言われると大変ですから、契約書で
「家賃1ヶ月分だけのペナルティで途中解約できるものとする」
と釘を刺している訳です。
既に支払済みの前家賃は、当たり前ですが日割り計算で返ってきます。
しかしデポジットは戻って来ない・・・
これが通常の途中解約処理です。
しかしまあそうは言っても・・・
1ヶ月分の家賃が戻らないのはお客様側とすれば勿体ないことですね。
特に転勤辞令が急に出て、致し方ない場合だと余計です。
お客様から頂いた転勤辞令をアパート側に見せて、交渉することも良くあるんです。
中には「ペナルティ無しでも良いよ」と理解をしてくれるオーナーもいます。
ところが、「転勤ではない理由で途中解約したい」場合・・・
これは実際にあったお客様の話です。
一番最初、そのお客様からクレーム電話をいただきます。
「真夜中にゴミ収集の音がうるさいのでアパートを解約したい」
ベトナム恒例の「夕方ゴミ収集」は、年配の女性が鐘を鳴らして到着を知らせてくれますが、真夜中ではありません。
聞くと、1箇所に集めたゴミを収集するトラックが夜中に来るというんです。
その音がうるさいと。
アパートオーナーに聞いても、
「そんなクレームは今まで聞いたことが無い」
と首をひねるだけ。
ちょっと腑に落ちないので、その時我が社にいた男性スタッフに1晩住み込んで音の様子をチェックさせました。
結果は「何の音もしない」。
お客様にもう一度確認をすると、
「音のしない日もあるけど、でもうるさい時は眠れないんです!」
さて、困りました。
お客様の言い分を聞いてあげたいのは山々なのですが、オーナーに納得のいく説明ができません。
またそのアパートには私共の別のお客様がもうすぐチェックインする予定でした。
夜中にうるさいアパートと知っていて入居していただく訳にもいきません。
その後何度か夜中の音の調査の為にスタッフに住み込み調査をさせましたが、結果は同じでした。
うるさいというレベルの音では無かったんです。
音に対する感覚は十人十色です。
敏感な方にしか分からない辛さもあるかもしれません。
結局オーナーと交渉してペナルティを半月分に減額してもらいました。
次すぐに入居予定の私達のもう一人のお客様がいたことが功を奏した次第です。
その後同じアパートにチェックインされたそのお客様に様子をお聞きすると、
「何もうるさくありませんよ」
後で分かったことですが・・・
そのお客様の職場が最近、結構アパートから遠いエリアに移転していたようです。
・・・何が何でも会社の近くに引っ越しをしたかったのでしょう。
会社から1ヶ月分のペナルティなど支払ってもらえない現地採用者でしたので、恐らくペナルティを払いたくない一心の狂言だったようです。
こういうクレーム対応を経験しながら、私達は学習します。
次同じ事があったとき、どういう処置をすれば良いのか。
お客様へのサポートと同時にオーナーヘのサポートも考えないといけないのが私達仲介業者の使命です。
「中庸を定める判断力」
が常に試されます。
お客様へのバランスの取れた対応に勤めていきたいと思います。
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