ハノイリビングの佐々木です。
ホアンキエム湖辺りのお土産屋さんを見てみると、カラフルな漆の器がよく売られています。
最初に見た時は、
「へぇ~、ベトナムでも漆製品があるのか」
と感心したものです。
それにあのカラフルさやポップなデザインは、日本とは違うものです。
歴史や伝統を受け継ぐというより、日常的な用途で漆が普及しているのかなと考えたりしました。
ということで、ハノイで日本人の方が運営しているという漆ギャラリーと漆教室は、一度尋ねてみたいところでした。
芸術の秋のとある日、漆絵ギャラリー「UZU Gallery」と、漆教室を見学してきました。
「UZU Gallery」の紹介の前に、ベトナムの漆について今回の取材で聞いたことをまとめてみます。
ベトナムでは漆絵が盛んなのだそうです。
というのは、ベトナムの漆はゴム質が多くて柔らかいので、器に塗って使うとすぐに磨耗して磨り減ってしまいます。
この点、日本の漆はゴム質が少なく固いので、器に塗って使っても長期間もつのだそうです。
もしベトナムの漆を器に塗ろうと思ったら、磨り減ることを考えて厚ぼったく塗りたくらないといけません。
そこで器に塗って使うというより、漆絵を描くという発想になります。
日本の発想で漆の絵(蒔絵)というと花鳥風月の華やかな印象ですが、ベトナムの漆絵はもっと自由です。
自然や人、動物、色々なものを題材にして、好きなように描くことができます。
こういった自由さが、ベトナムの漆の良さであり、楽しさなんです。
さて、絵を描くというくらいなので漆に顔料を混ぜたものを塗っていきます。
描く部分ごとに層のように色を塗り重ねていきます。
単に顔料入りの漆を、絵の具のように塗るだけではありません。
卵の殻や貝殻を砕いたものや、金箔を貼ったりして、表現の幅を広げます。
そして最後、これが通常の油絵などと決定的に違う点ですが、漆絵の表面を磨きます。
磨くことで表面が削られるので、層になった漆の色の層が出てきます。
部分ごとに違う色が顔をのぞかせてきて、絵が完成します。
こうした過程で作っていくということは、つまり絵を描く前から完成形を想定していなければならないということです。
これを考えたうえでないと、色を塗り重ねていくことはできません。
思い通りの色を出したいと思ったら、しっかり構想を練っておかないといけないということですね。
こう書くと難しそうですが、思い通りの色が出たことに喜んだり、思いがけない絵になったことに驚いたりと、とにかく驚きと楽しさが伴う作業のようです。
前置きはこれまでにして、本題に入りましょう。
「UZU Gallery」の漆教室で教えているのは、難波さんと、ベトナムで活躍する漆画家・安藤彩英子さん、そしてベトナム人の先生です。
今回お話をお伺いしたのは難波さんです。
現時点で登録している生徒さんは50人程度。
大部分は日本人が占めているようです。
が、私が見学した日もそうでしたが、1割くらいは日本人・ベトナム人以外の方がいました。
色を調合している人、丹念に塗っている人、絵の構想を練っている人・・・色々です。
金箔を貼ったり、砕いた卵の殻を張る作業以外にも、サランラップをクシャクシャにしたものを貼り付けている人もいます。
こうすることで、しわしわの質感が出るんですね。
イメージ通りのものを表現するために、工作のように色々な素材を使うようです。
ここの教室で使っているのは、いずれも天然漆です。
天然漆は乾きにくく、扱いが難しいという特徴があるようです。
それでも本当の漆の美しさを出すため、漆教室では天然にこだわっています。
安くて取り扱いやすく、手軽に乾く人工漆もあります。
もちろん、これで本当の質感は望めません。
しかしです。
日本から、取り扱いやすい人工漆がベトナムに大量に入ってきています。
扱いやすさから、たくさんの人が使うようになり、漆製品のほとんどに使われるようになりました。
ベトナムでは人工漆のことを「Son Nhat」と呼ぶそうです。
「日本の漆」というのと同じ言い方です。
けっして粗悪品を指す言葉として使っているのではありません。
便利で使いやすいという気持ちを込めてはいるのですが、漆の国の日本人としては心底喜べることでもありません。
素材が人工漆でも天然漆でも、作品として世に出た時はほとんど同じ価格で出回るそうです。
美術作品の場合、材料費や手間隙が、価格にそのまま反映するものではないからです。
それでも扱いにくい天然漆にこだわった作品が、人工漆と同じになってしまうというのは、作っている側からするとちょっとむなしいものがあります。
そこで、漆絵を途中でやめてしまうベトナム人の先生たちもいるでそうです。
せっかくの漆絵も、やる人がいないのでは発展もありません。
ここはなんとか漆絵人口が増えてくれることを願うばかりです。
1つの漆絵作品を作るのに要する期間は、使う技法や作品の大きさ、進むスピードにもよります。
目安としては、早い人で2~3カ月くらい、長い人では1年以上かかるとのことでした。
数カ月~1年も同じ作品に向き合っていれば、愛着も湧くでしょう。
壁にかかっている作品や、製作途中の作品たちを見ていたら、どれも力作揃いに見えました。
同じモチーフを描いている作品もありました。
が、どれも異なる色や技法が使われているので、見た目の印象が違います。
ここが個性の出しどころなんですね。
全部違うからこその面白みを感じるところです。
先生の難波さんは、日本語と英語を駆使して漆絵を教えていました。
後々大きな失敗をしないよう軌道修正をしたり、質問に答えてはくれますが、使う色などについてはあれこれ指示しているいる様子はありません。
生徒さんが好きなように色を塗ったり、技巧を凝らしたりしています。
個性的な絵の数々は、こういうところから出てきているのかもしれません。
ベトナムの漆絵について、
「何をやっても良いところが楽しい」
と教えてくれた難波さんです。
自由さや楽しむことを第一としているようです。
とくに楽しむことを全面に押し出しているのが、週末のクラスです。
この日は、お子さんや平日会社に通う会社員の人などがおもに集まるクラスです。
楽しむことをメインとして、好きなように作品を作ってもらっているそうです。
結果、出てくる作品は型にはまらない自由なもので、現代アートのように個性的でした。
教室が行われている部屋の隣が、ギャラリーになっています。
私が行った日は、安藤さんの作品がずらりとかけられていました。
宇宙や動物を主題とした、大判の作品が多くを占めていました。
「これは本当に漆の絵か」
と思ってしまうほど、濃淡のある多様な色合いをしています。
微妙な中間色、大理石のようなマーブル模様など、表現の種類は豊か。
この他にも、タイルのような卵の殻やキラキラの金箔などが、さらに多様な表現力を加えています。
ゴリラの絵がいくつかありましたが、あるものはかわいい、あるものは迫力があり・・・と受け取るイメージが全然異なります。
あえて光沢を出さず、ふさふさの毛の質感を出しているものもありました。
漆でこれだけ繊細な表現ができるというのは興味深いものです。
漆=伝統工芸というイメージがあるので、重厚かつ伝統的なデザインの部屋に飾ると思い込んでいましたが、絵の内容によって、色々な部屋に合いそうです。
難波さんは、ハノイ歴16年です。
12年前、ハノイ美術大学で開催されていた漆の絵画教室に参加したのが、ベトナム漆との出会いです。
その後の10年前に安藤彩英子さんと出会い、ギャラリーを開くことになったそうです。
当初、難波さんはギャラリーや教室の運営を担当していました。
しかし教室の方では、途中でやめてしまうベトナム人の先生も少なくなかったそうです。
上でも説明したように、ベトナムの漆絵は手間隙がかかる割には見返りの少ないためです。
なかなか教えてくれる人がいない一方、続けたいという生徒さんからの要望もあり、自分が教える立場になったそうです。
当初は週1日2日だったクラスも、今は週4日(先生から教わるのではなく、作業のみできるよう場を提供するワークショップも含めれば週5日)に増えました。
そんな漆教室の概要を、下記に記しておきます。
「UZU Gallery」漆教室
・スケジュール(曜日/時間/講師/授業料)
-月(10:00~12:00/難波さん/14ドル)
-火(10:00~12:00/Nguyen Huy Hoanさん/14ドル)
-木(10:00~12:00/講師なしで作業のみできるワークショップ/10ドル)
-金(10:00~12:00/安藤さん/17ドル)
-土(14:30~16:30/難波さん/14ドル)
・お休み:水曜日、日曜日
・電話番号:098-222-3285
・ホームページ:http://uzugallery.com
ギャラリーと漆教室の場所は、Ciputra(シプチャー)にある、難波さんのご自宅になります。
行く前に、電話をしてから訪ねてみてください。
今回取材をする前、私は
「自分には絵心がないから、漆絵なんて無理」
などと、自分で線引きしてしまっている部分がありましたが、生徒さんの自由な作品を見たら気持ちが変わりました。
漆絵をやったことのある人なんて、ほとんどいません。
ほぼ皆が初心者です。
最初は難しいかもしれませんが、趣味として楽しく、自分の作品も残せる習い事です。
ベトナムにいる間、ベトナムならではの自作の作品を残したい方はチャレンジしてみてください。
◆少しでも皆様のお役に立てれば嬉しいです。
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ベトナム漆の戸板を作成してくれる先を探しています。
戸板の大きさは、高さ1770mm*幅800mm*厚20mm
で、6枚。
両面の装飾が必要です。
装飾のデザインテーマは、広重名所江戸百景です。
渡邊様
お問い合わせ、ありがとうございます。
ベトナム漆については、ブログでもご紹介している難波さんに問い合わせてみるのが一番かと思います。
まずは、ブログで紹介しているUZU Galleryのサイトに行ってみていただければと思います。
リンク先サイトに問い合わせ先があります。
難波さんは十数年ハノイで過ごされており、漆業界にも知っている人が多いです。
戸板に絵を描いてくれる人も、ご存知かもしれません。
また、漆そのものにも詳しいので、どのように絵を描くか、どんな素材を使うか、どれくらいの費用がかかるのか、そうした細かい打ち合わせも可能だと思います。
まずは問い合わせてみていただければと思います。